学生や一般人はおろか料理人まで評価が高いサイゼリア。企業研究第一回目はサイゼリアを研究してみます
サイゼリヤは低価格なのに品質が高く、スタッフ人数が少なくても店が回る。 その秘密は「徹底した科学化・単純化・標準化」にあります。 この研究では、飲食店経営の視点からサイゼリヤの仕組みを紐解き、 中小規模の店舗でも再現できるポイントに落とし込みます。
1. サイゼリヤの経営思想:感覚ではなく科学
創業者・正垣泰彦氏は「飲食店は科学である」と繰り返し述べています。 サイゼリヤのすべての施策はこの思想に沿って設計されています。
- 誰がやっても同じ結果になる仕組みをつくる
- 複雑な判断を排除し、手順に従えばOKの状態にする
- 感覚・勘・職人技を最小化する
この考え方が、後述する「セル方式」「減点方式」「動線設計」に直結します。
2. セル方式(ユニット方式)の徹底
サイゼリヤの現場設計の核となる仕組み。 店内の業務を「セル(=独立ユニット)」に分割し、 誰が入っても同じ動きができる最適解の配置と手順をつくる方式です。
セル方式のポイント
- 各セルに必要な道具がすべて揃っている
- セル内で完結するので移動が少ない
- セル同士の受け渡しが明確(例:前菜 → 主菜 → ドリンク)
- 新人が入っても迷わず動ける
洋介さんの店舗で言うと、麺場・揚げ場・盛り付け・会計…などがそのままセルにできます。 動線短縮=回転スピード=売上増 に直結します。
3. 減点方式で「動きの無駄」を消す
サイゼリヤでは、行動を「加点」ではなく「減点」で評価します。 理由は、“ミスや非効率の原因が一瞬で見える”からです。
例:減点方式の考え方
- 冷蔵庫を開ける回数が多い → −2(事前準備不足)
- 取りに戻る動き → −1(配置不良)
- 盛り付け場所が遠い → −3(動線設計ミス)
これを繰り返すと、 「無駄な動きが自然に消える配置」だけが残ります。 ベテランの感覚に頼らず、誰でも改善できる仕組みです。
4. セントラルキッチンによる品質の均一化
サイゼリヤは基本、店で“調理しない”。 店舗は仕上げと加熱に特化させることで、次の効果が生まれます。
- 新人でも5日で即戦力になる
- 調理スキルの差が売上の差にならない
- 安定・高速・高回転が実現
中小店舗でも、 「仕込みは1ヶ所」「提供は各セル」という構造をつくれば再現できます。
5. 動線設計の“秒単位の最適化”
サイゼリヤの動線は「秒」で管理され、実験を繰り返して最適化されています。
主な動線思想
- 歩かない動線(最短距離)
- 振り返らない・屈まない(ムダ動作ゼロ)
- 同じ動作を繰り返すための配置
洋介さんの店でも「屈む・遠い・探す」は売上を下げる3大要因です。 動線を1m短くすると、一日で数百回の無駄が消えます。
6. オペレーションの「手数削減」と「分解」
サイゼリヤはどの作業も“手数”で分解して管理しています。
- 皿を置く → 1手
- ソースをかける → 1手
- スプーンを添える → 1手
これを全部足し算して、「5手以内」に収める設計をしています。
作業は5手以内に収める これは中小規模の店舗でもすぐに真似できる黄金法則です。
7. 最重要:サイゼリヤの本当の強さは「教育システム」
サイゼリヤは“育てるコストが最も安い企業”です。 それは、教育そのものを仕組み化しているからです。
教育のポイント
- 新人は最初に「セル」から覚える
- 手順は動画・写真で明確
- マニュアルは読むものではなく“見るもの”
- 失敗は個人ではなく「セルの設計を疑う」
これは洋介さんの店の「新人が仕事を覚えるスピード」を劇的に変えます。
8. サイゼリヤから学べる「明日から現場で使える5つ」
- セル方式で店内をユニット化する
- 減点方式で無駄な動きを見える化する
- 動線を1m短くする
- 作業は5手以内にする
- 新人教育は“写真と動画”で統一
これだけで、 「人が足りなくても回る店」 「誰が入っても同じ品質」 が実現します。
まとめ
サイゼリヤの強みは単なる低価格ではありません。 店を“科学”として設計し、 オペレーション・教育・動線・配置・手数を徹底的に最適化していることにあります。 中小規模の飲食店でも、この思想は確実に再現できます。

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